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相続の養子縁組とは?節税面でのメリットと注意点を解説

相続の養子縁組とは?節税面でのメリットと注意点を解説

預貯金や不動産などの財産を引き継ぐときに、節税する方法を調べる方は多いです。
相続税の特例や控除を適用させる方法はさまざまありますが、細かい条件を満たさなければ減税が認められないため、事前に確認しておきましょう。
本記事では、相続における養子縁組とは何かお伝えしたうえで、メリットと注意点について解説します。

相続における養子縁組とは

相続における養子縁組とは

そもそも養子縁組とは、本来は法定相続人の権利を持たない第三者が、被相続人の実子と同じ扱いで相続順位と相続割合を引き継ぐ権利を得られる制度です。
養子縁組には2種類あり、一般的に活用されている普通養子縁組と、特別な事情が認められたときのみに活用される特別養子縁組に分類されます。
普通養子縁組と特別養子縁組の違いは、実父母との関係が持続されるかどうかです。
普通養子縁組を利用した場合、被相続人の養子になったあとも実父母との関係が継続されるため、実父母と養父母の相続権を持てます。
特別養子縁組を利用した場合、被相続人の養子になった時点で実父母との関係が消滅するため、実父母の相続権を失います。
申請方法においても、普通養子縁組は市区町村の役所に書類提出をするだけで完了しますが、特別養子縁組は実父母の同意を得たうえで申請し家庭裁判所の許可を貰わなければなりません。
養子縁組をおこなう代表的な3パターンには、相続順位の低い孫を養子にする・相続権のない子どもの配偶者を養子にする・相続権のない再婚相手の連れ子を養子にするがあります。
孫と祖父母の関係では法定相続人になれないものの、養子縁組を組むと実子と同等の第一順位の法定相続人として認められます。
孫に財産を渡すときは生前贈与の制度を利用できますが、年間非課税枠の上限は110万円に設定されているため、節税対策として活用する方が多いです。
子どもの配偶者には法定相続人になる権利がないものの、自営業や介護で積極的に関わってくれたのであれば、第一順位で相続権を渡すために養子縁組を組むケースがあります。
亡くなった方に対する貢献度が高かった場合、特別寄与料の請求が認められているものの、算定の複雑さや不確実性を理由に養子にして財産を渡したほうが良いと考える方が多いです。
再婚した配偶者に子どもがいた場合、一緒に住んでいるだけでは連れ子に相続権は発生しません。
再婚すると夫婦関係と同時に親子関係が生まれると認識する方もいますが、実際には連れ子と実子の関係になるためには別途で養子縁組を結ぶ必要があります。
連れ子と養子縁組をするのであれば、実子と兄弟関係になるため、事前に十分な説明をしたうえで納得してもらえなければトラブルに発展する可能性があります。

相続対策で養子縁組をおこなうメリット

相続対策で養子縁組をおこなうメリット

相続対策で養子縁組をおこなうメリットは、基礎控除額が増える・生命保険金の非課税控除額が増える・相続人の立場を継承できるの3点が挙げられます。
まず、一般的に納税するべき相続税額を確定する際には、基礎控除と呼ばれる引き継ぐ遺産額に対して相続税が発生しない非課税枠が設けられています。
具体的な基礎控除額の計算式は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
法定相続人が1人だと基礎控除額は3,600万円であるのに対して、法定相続人が3人だと基礎控除額は4,800万円となります。
つまり、養子縁組を有効活用すると法定相続人の数を増やせるため、結果的に相続財産に対する基礎控除額の割合を増やして節税が可能です。
養子縁組制度を使って基礎控除額の節税対策をする場合、被相続人に実子がいれば養子の上限数は1人まで、被相続人に実子がいなければ養子の上限数は2人までと制限があります。
くわえて、養子縁組制度を不当に活用した結果、大幅な節税対策をしていると判断された場合は、法定相続人として認可されない可能性があります。
続いて、被相続人が亡くなったために発生した死亡保険金や死亡退職金は、非課税限度額以内であれば相続税が発生しません。
死亡保険金と死亡退職金に関する非課税限度額の計算式は、「500万円×法定相続人の数」です。
つまり、養子縁組を有効活用して法定相続人の数を増やすと、非課税限度額が増額されて節税効果があります。
最後に、養子縁組をすると節税対策ができるだけではなく、本来は法定相続人に該当しない人でも相続人の立場を継承できるため被相続人の希望を尊重できます。
たとえば、実子ではないものの幼少期から大切に育ててきた子どもや、歳を重ねてから献身的なサポートをしてくれた人でも養子縁組がなければ財産を渡せません。
生前の関係性が深かったとしても、相続時には法的に赤の他人として判断されてしまうからです。
そこで、養子縁組の制度を利用すると、残された人にも相続人としての立場を保証できるため安心です。

相続対策で養子縁組をおこなう際の注意点

相続対策で養子縁組をおこなう際の注意点

相続対策で養子縁組をおこなう際の注意点として、相続争いの可能性・孫を養子にすると相続税額が2割加算される場合がある・過度な税金対策は否認されるケースもあるため気を付けましょう。
法定相続人が増えると基礎控除や保険金などの非課税限度額が増えるため、すべての財産に対する軽減措置は有効ですが、法定相続人1人に対する相続割合は減少します。
たとえば5,000万円分の財産があった場合、法定相続人が1人であれば1人で5,000万円を相続しますが、養子縁組によって法定相続人が2人になれば1人2,500万円ずつ分配されます。
被相続人の独断で養子縁組の制度を使ってしまうと、配偶者や実子や兄弟姉妹などのもともと相続権を持っている親族たちから反感を買う原因になりかねません。
さらに、法定相続人同士でおこなう遺産分割協議でも養子になった方が肩身狭い思いをしたり、お互いの主張が食い違って不動産などの財産の運用・売却などがまとまらなかったりします。
また、被相続人の子どもや両親など一親等に該当する血族もしくは配偶者以外が財産を引き継ぐ場合は、2割加算の対象になります。
具体的に2割加算の対象者は、二親等の血族に該当する兄弟・姉妹・孫と三親等の血族に該当する甥・姪です。
孫が養子になると三親等から一親等に変わるため2割加算対象外になると認識している方も多いですが、相続税を一世代分飛ばした節税対策を回避する目的で導入されています。
ただし、被相続人が亡くなった時点で実子も亡くなっている場合に限り、一世代飛ばした節税対策ができないため、2割加算の対象にはなりません。
最後に、養子縁組の制度を活用した節税対策は比較的安全性が高いと言われていますが、税務署が「過度な節税対策に出ている」と判断した場合は否認されるケースも報告されています。
被相続人が亡くなる直前に養子縁組を結んだものの、養子が財産を一歳引き継がないでいると基礎控除額や保険金等の非課税限度額を増額させる目的と判断されやすいです。
節税目的で養子縁組を利用するにしても、疑惑がかけられないように適切に財産を引渡しましょう。

まとめ

相続税対策の手段はいくつかありますが、養子縁組の制度を活用すると比較的簡単かつ安全に基礎控除額や保険金等の非課税限度額を増額できる可能性があります。
幼少期から実子と変わらない関係性を築いていたり、子どもの配偶者に事業や介護などでお世話になったりして恩返しをしたいのであれば、被相続人の希望も尊重されます。
ただし、親族に相談せずに養子縁組を結んでしまうと、後からトラブルになる可能性があるため気を付けましょう。