相続空家の特例は共有名義でも適用できる?併用の可否と一緒に解説
被相続人から引き継いだ不動産が空家になるのであれば、特例を使ったが適用できる場合があります。
しかし、共有名義で所有している場合は単独名義と比べて、手続きの流れが異なる可能性があるため注意が必要です。
本記事では、相続空家の特例とはどのようなものかをお伝えしたうえで、共有名義の物件に適用できるのかと、ほかの特例との併用の可否について解説します。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
相続空家の特例とはどのようなものかについて
相続空家の特例とは、被相続人から引き継いだ不動産に対して、一定の要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円の控除が適用される制度です。
対象者は、相続もしくは遺贈によって亡くなった被相続人から空き家状態の家屋と敷地を取得した方です。
対象になる不動産は、相続発生の直前まで被相続人が1人で住んでいた・昭和56年5月31日以前に建築された・区分所有建物登記がされていない建物でなければなりません。
さらに、相続開始から3年後の12月31日までに譲渡済み・1億円以下の売却代金・相続開始から譲渡までの期間に事業用・貸付用・居住用として利用していない・耐震基準の適用要件を満たす必要があります。
売却代金を分割で受け取る場合は、分割料金の合計額が基準になるため、合算した金額が1億円を超えるのであれば特例を利用できません。
以前までは、築年数の古い建物を新耐震基準を満たすリフォーム・修繕をするか、解体して更地の状態で売却しなければ特例は適用されませんでした。
しかし、令和6年1月1日に耐震基準の要件が緩和され、現在は譲渡した翌年2月15日までに購入者が耐震リフォーム・解体を済ませれば、特例を活用した売却が認められています。
そもそも、相続空家の特例が発足された背景には、日本全体の少子高齢化による空き家問題の増加が関係しています。
相続や遺贈などで不動産の所有権を引き継いだものの、築年数が古くて活用方法がないゆえに、放置する方が増えてしまいました。
空き家が放置されると、自然災害や経年劣化による倒壊リスクがあるほか、犯罪現場として使われて治安が悪化するなどのトラブルに発展しかねません。
そこで、築年数が古くて放置されるリスクの高い空き家に対して、所有者たちの負担を軽減しようと最大3,000万円の控除が適用される特例が発足されました。
ただし、親子や夫婦などの特別な関係がある方への譲渡は、過度な節税対策としてみなされます。
また、申請を却下される可能性があるため、相続空家の特例を活用するのであれば、必ず第三者に売却してください。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
相続空家の特例は共有名義の物件にも適用できる点について
相続空家の特例は、一定の要件を満たしているのであれば共有物件にも適用できます。
ただし、不動産を被相続人と相続人が共有している状態と相続人同士で共有している状態では、最大3,000万円の控除が受けられる範囲が異なるため気を付けましょう。
被相続人と相続人が不動産を共有していた場合、被相続人の共有持分のみに特例を適用できます。
被相続人が亡くなる前から相続人が所有権を持つ共有持分に対しては、特例を適用できません。
被相続人と相続人の2人で共有していた不動産を5,000万円で売却した場合、相続空家の特例を適用できるのは被相続人の持分である2,500万円に対してのみです。
相続人同士が不動産を共有していた場合、各相続人が自分たちの持分に対して特例を適用できます。
2人の相続人が一つの不動産を共有すると、それぞれの相続人が最大3,000万円の控除が適用されるため、実質最大6,000万円の控除が受けられる仕組みです。
一般的には、不動産のように物理的に分配がむずかしい財産は共有名義にしないほうが良いとされていますが、空き家をすぐに売却する予定であれば、複数人で所有した方が節税になる可能性があります。
ただし、令和6年1月1日以降に譲渡する空き家を3人以上で共有している場合、それぞれの相続人たちの控除額の上限は2,000万円に引き下げられました。
つまり、相続人2人であればそれぞれの相続人が3,000万円ずつ控除があり合計6,000万円になりますが、相続人3人であればそれぞれの相続人が2,000万円ずつ控除があり合計6,000万円になります。
節税対策として共有名義を選択するのであれば、適用される控除額の上限が変更されている点に注意しましょう。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
相続空家の特例と小規模宅地の特例が併用できるケースについて
相続空家の特例と小規模宅地の特例は、併用できます。
小規模宅地の特例とは、被相続人が所有していた不動産を対象に一定の要件を満たすと、不動産評価額を最大80%減額できる制度です。
不動産を相続したものの、評価額が高くて翌年の相続税の支払いが負担になると悩む方が多いため、配偶者や子どもなど特別な関係性の方を対象に減額措置を発足しました。
330㎡以内の特定居住用宅地・400㎡以内の特定事業用宅地と特定同族会社事業用宅地は80%減額、200㎡以内の貸付事業用宅地は50%減額されます。
それぞれ条件は設けられていますが、1億円の評価額に対して最大2,000万円まで圧縮できれば、翌年の相続税の負担も軽減されて安心です。
ただし、相続空家の特例と小規模宅地の特例は、必ずしも併用できるわけではありません。
相続人に持ち家がないケースもしくは配偶者が相続したケースに限って、併用が認められます。
原則として、被相続人と相続人が同居している必要がありますが、相続人に持ち家がなければ同居していなくても、家なき子特例として併用が認可されます。
家なき子特例を利用するのであれば、被相続人から引き継いだ空き家を相続税の申告期限まで所有し続けなければなりません。
引き継いだ不動産財産を売却して、できるだけ早く現金化しようと考えているのであれば、タイミングには気を付けてください。
ちなみに、被相続人の居住用物件を配偶者が相続した場合、生前に同居していたかどうかの確認や売却時期の規定などはありません。
基本的には、特例や控除の制度を重複して適用させるのは、過度な節税対策とみなされて却下されますが、例外的に認められている租税特別措置もあります。
小規模宅地の特例のほかには、居住用財産の3,000万円控除・特定居住用財産の買い替え特例・居住用財産の譲渡損失の繰越控除・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除・住宅ローン控除などです。
ただし、併用するためには必ず双方の適用要件をすべて満たしている必要があるため、必要に応じて不動産会社の担当者など専門家に確認してください。
一方で、相続税の取得費加算の特例のように、相続空家の特例との併用を認めていないものもあります。
相続税の取得費加算の特例は、納税額を諸費用として計上できるため税金の支払い負担を軽減できる制度ですが、どちらを適用させた方が節税効果が高いかシミュレーションが必要です。
シミュレーションの計算も複雑になるケースが多いため、専門家への相談をおすすめします。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
まとめ
相続空家の特例は、放置される空き家問題を解決するために発足された制度であり、共有名義の不動産に対しても要件を満たせば適用されます。
相続人の数に応じて限度額は変動するため、相続した空き家をすぐに売却する予定であれば共有名義で手続きするのも良いでしょう。
基本的に特例の重複は認められていないものの、小規模宅地の特例のように一部例外的に併用できるため、専門家に相談しながら節税できる部分を確認しましょう。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む