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不動産売却で高齢者トラブルが増加している?事例と回避法を解説

不動産売却で高齢者トラブルが増加している?事例と回避法を解説

不動産を所有している高齢者は、詐欺のターゲットにされやすいことは、今も昔も変わらないようです。
訪問営業で強引に勧誘を受けて断れなかったり、相場よりも不利な条件で契約を迫られたりする悪質なケースがあるため、トラブルにならないように対策が必要です。
本記事では、高齢者の不動産売却トラブルが増加している現状をお伝えしたうえで、よくある事例と回避する方法を解説します。

高齢者の不動産売却トラブルが増加している状況とは

高齢者の不動産売却トラブルが増加している状況とは

独立行政法人の国民センターは、高齢者の自宅の売却トラブルに関する相談割合が増加していると注意喚起を出しています。
2016年〜2020年の相談件数を見ると、60歳未満〜60代は年々トラブルが減少している一方で、70代以上の世代はトラブルの相談が増加しているのがポイントです。
国民センターに寄せられた相談件数の52.3%が70歳以上であり、高齢者が悪質な不動産会社や営業のターゲットにされやすいと分かります。
よくあるケースとして、「強引な勧誘で市場相場以下の売却料金で取引してしまった」「解約を申し出たら違約金が発生した」などがあります。
安易に売却の契約をしてしまうと、安い売却料金で取引をして十分な資金調達ができなかったり、知らぬ間に不動産の所有権を失っていたりするリスクがあるため注意が必要です。
若い世代は訪問営業に対して抵抗感を感じやすいですが、高齢者は「話を聞くだけ…」と営業担当者の話を聞いてしまい、トラブルに巻き込まれるケースが多いです。
そもそも、消費者が所有する自宅を不動産会社に売却した場合、クーリング・オフはできません。
とりあえずは書面に署名・押印をして、後からクーリング・オフの手続きをすれば大丈夫と考えているのであれば危険です。
クーリング・オフは、訪問販売やテレアポなど個人の消費者に対して不意打ち的に契約を迫った場合、一定の期間中であれば無条件に契約解除できる制度です。
悪質業者から個人消費者を守るために作られたものであり、売主が個人で買主が宅地建物取引業者である場合は、クーリング・オフの対象にはなりません。
また、高齢者が不動産売却トラブルに巻き込まれる原因として、判断能力が低下している点が関係します。
不動産のような高額財産は細心の注意を払って管理しようとするのが一般的で、若年層を相手に売却話を持ちかけても警戒される可能性が高いです。
一方で、判断能力が低下しやすい高齢者をターゲットにすれば、専門用語を理解できずに言葉巧みに業者側に都合の良い契約を結びやすいでしょう。
実際に、被害者のなかには認知症の症状があって契約した事実を覚えてないケースも報告されています。
高齢者がご自身で不動産管理を徹底する意識はもちろん、家族も積極的に関わるようにするのが大切です。

高齢者の不動産売却に関するトラブルの事例

高齢者の不動産売却に関するトラブルの事例

高齢者の不動産売却に関するトラブルの事例として、強引な営業・シロアリ駆除費用請求・定期的な勧誘メールなどがあります。
まず、一人で暮らす高齢者の自宅に不動産会社の営業担当が訪問して長時間居座りながら、売却のメリットを話して強引に契約を結ぼうとするケースです。
住んでいる自宅を売却する意思がないと伝えても、高齢者の一人の暮らしのリスクを話したり、売却後の老人ホーム生活のメリットを話したりされます。
不動産取引の契約書は専門用語が多く、本来は不動産会社が一つずつ説明する義務がありますが、高齢者の判断能力の低下を理由に説明を省略する悪質性も懸念されています。
不動産に関する知識が乏しくてインターネット検索する可能性が低くて、認知症のような症状が出始めて判断能力が低いと判断された高齢者は、狙われやすいです。
最近では、インターネットを使えば簡単に近隣物件や類似物件の売出価格が調べられるため、不動産会社が提示する売却価格が相場を下回っていれば、すぐに契約を断れます。
しかし、高齢者の場合はそういった調査が難しい場合もあるため、不動産会社の担当者から受け取る情報を真に受けてしまい、相場以下での売却に納得してしまう可能性があります。
悪質性の高い不動産会社は、契約のために嘘の説明をするケースもありますが、売却手続きが終わってから高齢者の家族が不当な契約に気づいても、契約解除はできません。
基本的に認知症などで記憶力や判断能力が欠如しているような高齢者は、独断で不動産売却はできません。
しかし、不動産会社が言葉巧みに契約の手続きを進めてしまうと、本人や家族の気づかない間に、不動産の所有権を失ったり、賃貸借契約を結んでいたりします。
認知症であると証明ができれば、例外的に売却契約を白紙にできる可能性はありますが、すでに買い手との契約が済んでいた場合は取り戻せない可能性も考えられます。
また、不動産売却をした後に、シロアリ検査でトラブルがあったため、駆除費用を求められるケースも多いです。
本来であれば、売却手続きが成立する前に専門家が不動産の状態を確認して、問題があれば誰が費用を負担するべきか話し合います。
一通り手続きが済んでから追加で数百万円単位の駆除費用がかかるとなれば、売主の金銭的な負担も大きくなるため、売却後にトラブル対応しなければなりません。

高齢者が不動産売却のトラブルを回避する方法

高齢者が不動産売却のトラブルを回避する方法

高齢者が不動産売却のトラブルを回避する方法として、クーリング・オフには対応していないため、納得できない場合はきちんと断るのが最も有効です。
宅地建物取引業法第37条2項目で定められている通り、不動産の売買契約が成立した時点で、無条件の契約解除は認められません。
不動産の売買契約成立後に売主都合で売買契約を解除するのであれば、手付金の2倍額を買主に支払う「手付倍返し」を使うしかありません。
また、手付解除の期間を過ぎているのであれば、契約条項に記載された違約金の支払いが求められます。
不動産のような高額財産の取引では、必然的に手付金や違約金も高額になるため、「クーリング・オフをすれば大丈夫」と安易に契約を結ばないようにしてください。
続いて、不動産の売買取引では専門用語が多く用いられており、今まで不動産取引をした経験のない高齢者では正確に状況を理解するのが困難です。
売却金額の根拠や契約内容、売却後に不具合が発生した場合の責任問題など入念に確認して納得したうえで、手続きを完了しなければなりません。
悪質な不動産会社は、詳細をできるだけ省略して早く契約させようと動き出しますが、分からない項目はその都度質問して納得いくまで説明を受けてください。
もしも、納得できる説明を受けられないのであれば、契約手続きに進まずに営業や勧誘は断るべきです。
宅地建物取引業法第47条2項では、一般消費者が勧誘を断ったにも関わらず勧誘行為を続けるのは禁止と決められています。
不安があれば、家族にも相談しながら不動産会社の勧誘や営業の対策をしておくと安心です。

まとめ

高齢者の一人暮らしが増えている背景から、自宅の売却話を持ちかけられて、後からトラブルになるケースが増えているため注意が必要です。
若年層と比べて、訪問販売でも担当者の話だけは聞こうとする高齢者が多いため、老後生活の不安を煽りながら不動産会社に有利な契約を結ぼうとするケースもあります。
納得できる契約内容でなければ断るようにして、不安要素があれば家族と相談しながら営業や勧誘はうけないしましょう。