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自分で相続放棄する手続きの流れは?必要書類と注意点を解説

自分で相続放棄する手続きの流れは?必要書類と注意点を解説

「被相続人に借金があったとき、相続しない方法はあるの?」と疑問を持つ方は多いです。
相続放棄をすれば、負債を引き継ぐ必要はなくなりますが、自分で手続きするには複雑なので、基本的には専門家に依頼したほうが良いケースもあります。
本記事では、自分で相続放棄の手続きをする流れをお伝えしたうえで、必要書類と注意点を解説します。

自分で相続放棄の手続きするときの流れについて

自分で相続放棄の手続きするときの流れについて

自分で相続放棄するときの手続きの流れは、相続財産の調査・管轄の家庭裁判所の確認・必要書類の収集・相続放棄申述書の作成・申述書と必要書類の提出・回答書の返送・相続放棄申述受理通知書の到着です。

相続財産の調査

まず最初にやるべき作業が、相続財産の調査です。
現金・預貯金は銀行に預けている分だけではなく、自宅の金庫・タンスなど細かい部分に隠されている可能性があります。
株式等の有価証券や生命保険は、契約書・郵便物で確認し、不動産は固定資産税通知書や名寄帳で確認します。
被相続人のPCやスマートフォンのロックを解除できるのであれば、保存されているファイルやアプリから契約している金融機関や証券会社を把握できる可能性が高いです。
自分で手続きをするとしても、窓口は原則被相続人の住んでいる地域を管轄する家庭裁判所です。

必要書類集め

窓口になる家庭裁判所がわかれば、すぐに必要書類を集めはじめます。
必要書類は数が多く、戸籍謄本などの取得までに時間を要するものもあるので、できるだけ早いタイミングで動き出すのが懸命です。
相続放棄をするうえで必要になる共通書類にくわえて、被相続人との関係性に応じて追加の書類が求められます。

申述書の作成

必要書類を集めたら申述書の作成に進みます。
フォーマットは裁判所のホームページからダウンロードできるので、必要事項をすべて記入して、申述書と必要書類を一緒に家庭裁判所に提出しましょう。
提出方法は、家庭裁判所への郵送もしくは窓口への持参の2択です。
郵送の場合、発送して届けられたとわかるように、簡易書留やレターパックを利用するようにしてください。

相続放棄回答書の回答

申し立てが完了すると、家庭裁判所から相続放棄証明書と相続放棄回答書の2種類の書類が送付されます。
証明書には、審査するうえで必要な質問が記載されているので、回答書に記入して、記載されている期限内に家庭裁判所宛に返送してください。
このときも簡易書留もしくはレターパックにすると、送付ミスを防げます。
一般的に、返送期間は1週間程度しか設けられていないので、送付されたらすぐに記入して返送してください。
回答書を返送して10日ほど経過して、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が交付されれば、家庭裁判所から成績に相続財産を放棄したと認められます。

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自分で相続放棄の手続きをするための必要書類について

自分で相続放棄の手続きするための必要書類について

自分で相続放棄の手続きをする場合、必要書類の収集が必要です。
被相続人との関係性によって、用意するべき必要書類が異なるので、気を付けましょう。

共通して必要な書類

共通して必要な書類は、申述書・被相続人の住民票除籍もしくは戸籍附票・申述人(放棄を検討している人)の戸籍謄本・被相続人の死亡記録がある戸籍謄本です。
被相続人の死亡記録がある戸籍謄本として、除籍謄本や改製原戸籍があります。
被相続人の配偶者の場合、追加で必要な書類はありません。

第一順位相続人の場合

第一順位相続人の場合、申述人が代襲相続人の場合に限って、被代襲者の死亡記録のある戸籍謄本が必要です。
ここでいう代襲相続人とは、被相続人にとっての孫・ひ孫を指していて、被代襲者は本来相続する予定だった方です。
被相続人の子どもや孫が該当する可能性があります。

第二順位相続人の場合

第二順位相続人の場合、被相続人の子どももしくはその代襲者が死亡している場合に限って、その子どもの戸籍謄本が必要です。
被相続人の直系尊属の中に死亡者がいる場合に限って、直系尊属の死亡記録がある戸籍謄本が必要です。

第三順位相続人の場合

第三順位相続人の場合、被相続人の子どももしくはその代襲者が死亡している場合に限って、その子どもの戸籍謄本が必要になります。
被相続人の直系尊属の中に死亡者がいる場合に限って、直系尊属の死亡記録がある戸籍謄本が必要です。

代襲相続人の場合

申述人が代襲相続人の場合に限って、被代襲者の死亡記録のある戸籍謄本が必要です。
このように、関係性によって提出しなければならない必要書類の数が大きく異なります。
原則として、相続財産を放棄するのであれば、被相続人が死亡したと知った日から3か月以内におこなわなければなりません。
それを過ぎてしまうと、自動的に相続する意思があると判断されます。
プラスの財産に対しては相続税が発生し、マイナスの財産に対しては相続人たちに支払い義務が引き継がれるため、早急に判断しなければなりません。
役所で書類を取得するためには、営業時間や待ち時間を含めて膨大な時間がかかると想定したほうが良いです。
どうしても、必要書類の収集で不安があったり、煩わしさを感じたりするのであれば、弁護士などの専門家に依頼すると、効率よく手続きが進められます。

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自分で相続放棄の手続きするときの注意点について

自分で相続放棄の手続きするときの注意点について

自分で相続放棄の手続きをするときの注意点を6つ解説します。

相続放棄の手続きの注意点①:提出書類に不備があると承認されない

1つ目は、提出書類に不備があると承認されず、裁判所から呼び出される可能性があります。
遠方に住んでいる場合、飛行機や新幹線などの移動費をかけて家庭裁判所を訪問しなければならず負担になる人も多いです。
なかでも申述書の書き方に間違いがあると「直接話を聞きたいから」と呼び出される可能性がありますが、専門家に依頼すれば、ほとんど起こりません。

相続放棄の手続きの注意点②:期間を過ぎると却下される

2つ目は、相続放棄できる期間を過ぎて却下されてしまう可能性があります。
基本的に被相続人の死亡が発覚してから3か月以内しか相続財産を放棄する手続きは認められませんが、書類集めや家庭裁判所とのやりとりを含めるとあっという間です。
最初の請求までは進んだものの、家庭裁判所からの返送を待っている間に期間が過ぎてしまった事例もあります。
手続きをせずに期間が過ぎると法定単純承認として、それ以降の相続財産の放棄は認められないので気を付けましょう。

相続放棄の手続きの注意点③:再申述がむずかしい

3つ目は、一度却下されると再申述がむずかしいです。
もしも一度目の申述が認められなかった場合、弁護士などの専門家に「内容に対して受理してもらえる可能性はあるのか」を相談してみるのが賢明です。

相続放棄の手続きの注意点④:限定承認は判断がむずかしい

4つ目は、限定承認を適用させているときは、安易な相続財産の放棄を推奨しません。
限定承認とは、被相続人に債務があってもプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する方法です。
この方法が認められるケースは極めて稀ですが、当てはまる可能性に関しては自分で判断するのがむずかしいので、基本的には弁護士などの専門家に相談するべきです。

相続放棄の手続きの注意点⑤:相続権をめぐってトラブルになる

5つ目は、相続権をめぐってトラブルになる可能性があります。
相続財産を放棄すると決めたら、次順位の相続人に引き継ぐ権利がまわります。
手続きが完了したからといって次順位の相続人にその事実を伝えないでいると、該当する相続人は借金などの返済義務が突然生じるので困ってしまうでしょう。
伝える義務があるわけではないものの、迷惑をかけてしまう可能性があるので、必ず放棄した事実は次順位の相続人に伝えてください。

相続放棄の手続きの注意点⑥:精算人に引き継ぐまでは管理義務がある

6つ目は、相続財産を放棄しても精算人に引き継ぐまでは管理義務があります。
土地や建物などの不動産を引き継がないと決めたとしても、新しい所有者が見つかるまでは定期的な清掃や外観維持などをしなければなりません。
空き家の状態で放置して、近隣トラブルが発生したら、賠償責任を問われる可能性があるので気を付けましょう。

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まとめ

相続放棄の手続きは記載方法や書類集めが複雑になる可能性があるので、要注意です。
被相続人との関係性に応じて提出する書類が異なるため、早めに準備を進めましょう。
限定承認や再申述などで分からない項目が多かったり、手続きが煩わしく感じたりする場合は、弁護士などの専門家への依頼を前向きに検討してみてください。