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土地の相続税における物納とは?できる対象やメリットを解説

土地の相続税における物納とは?できる対象やメリットを解説

相続税は現金で一括払いが原則ですが、現実的にはどうしても支払うことが難しい状況があります。
そこで物納を選ぶ選択肢がありますが、物納が認められる条件は限られており、デメリットもあるため慎重に検討することが必要です。
そこで今回は、土地の相続税における物納とはなにか、またできるケースやメリットについて解説します。

土地の相続税における物納とは?

土地の相続税における物納とは?

お金や不動産などの遺産相続を受けた場合にかかる税金が相続税です。
相続税は現金による一括納付が基本ですが、一括が難しい場合は分割払いとして「延納」が認められます。
さらに延納でも支払いが困難な場合には、物納が認められるケースもあります。
物納が認められる条件は、以下の3つです。

相続税の物納が認められる条件①延納しても金銭による納付が困難

相続人財産と相続人が所有する財産から支払い、残額を延納にしても支払えない場合に物納が認められます。
物納には限度額があり、初めから相続税全体を物納にできるわけではありません。
物納の限度額は、相続税額から「すぐに支払える額」「年間の資金余剰額×延納期間」「臨時的な資力」の要素を差し引いて決定します。

相続税の物納が認められる条件②申告期限までに物納申請書を提出

物納を選択する場合は、申告期限までに物納申請書と物納手続関係書類を提出する必要があります。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内と定められています。
期限までに物納手続関係書類を提出できない場合は、延長届出書の提出により延長が可能です。
1回の提出につき3か月まで、最長1年まで物納手続関係書類の提出を延長できます。

相続税の物納が認められる条件③物納適格財産を物納すること

物納できる相続財産には、制限があります。
不適格な財産は申請が却下され、物納が認められません。
また、物納ができる財産のなかには優先順位があり、他に物納可能な財産がない場合に限り物納できるものもあります。

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土地の相続税において物納できる財産とは?

土地の相続税において物納できる財産とは?

土地の相続税において、物納できる財産とできない財産があります。
また、できる財産のなかでも優先順位があり、自分で好きなものを自由に選べるわけではありません。
ここでは、物納の優先順位と物納ができない財産について解説します。

土地の相続税において物納できる財産の優先順位

物納ができる財産には優先順位があり、第1順位のものを所有していなければ後順位の物納が認められます。
同一順位の財産のなかからであれば、物納する財産を自分で決められます。
第1順位に定められているのは、以下の財産です。

●不動産
●船舶
●国債証券
●地方債証券
●上場株式


第1順位の財産がない場合は、第2順位として非上場株式などの物納が認められます。
第2順位がない場合は、第3順位の動産の物納が可能です。
ただし、特定登録美術品に関しては上記の優先順位に関係なく、一定の書類の提出により物納が認められるケースがあります。

土地の相続税の物納における物納劣後財産とは

物納劣後財産とは、売却や処分などが難しい財産のことを指します。
物納にあてられる他の財産が何もない場合に限り、物納劣後財産による物納が認められます。
物納劣後財産の例は、以下のとおりです。

●市街化調整区域内の土地
●接道条件を満たしていない土地
●法令違反の建築物がある土地


売却したとしても売り手が付きにくい、不利な条件の土地は、物納劣後財産になる可能性が高いため注意しましょう。

土地の相続税において物納ができない財産とは

相続税において物納ができない財産は、管理処分不適格財産と呼ばれています。
物納劣後財産の場合、他の財産がなければ物納できるのに対し、管理処分不適格財産は初めから物納ができないことが決まっています。
管理処分不適格財産の例は、以下のとおりです。

●担保権が設定されている不動産
●境界が不明瞭な土地
●争訟をしなければ通常使用ができない不動産
●共有者全員の同意を得ていない共有不動産
●耐用年数を経過した建物


一般的に、処分・管理のどちらも困難である財産が管理処分不適格財産にみなされます。

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土地の相続税における物納のメリット・デメリット

土地の相続税における物納のメリット・デメリット

相続税における物納は、現金による納税ができない場合の救済措置になり得ますが、状況によりメリット・デメリットがある点には注意が必要です。
ここでは、物納のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

土地の相続税における物納のメリットとは

土地の相続税における物納のメリットは、土地を売却する場合の経費や税金を削減できる点です。
相続した土地を売却する場合、譲渡所得税や不動産会社へ支払う仲介手数料などの経費がかかります。
売却益から税金や経費を差し引くと、相続税額に満たないケースもあるでしょう。
一方、物納で収納される金額は相続税評価額で計算されます。
物納の収納価格が相続税を上回る場合、差額は現金で返還されます。
つまり、土地の時価よりも相続税評価額のほうが高い場合は、物納のほうが売却よりもお得です。
また、土地を売却する場合、売り手がなかなか見つからず、現金化しようと思っていても納税期限に間に合わない可能性が考えられます。
不動産を物納する場合、申請をすると固定資産税の減免も可能です。
相続した土地が物納の条件を満たしており、売却よりもメリットが多いことが確認できた場合は、物納を選択すると良いでしょう。

土地の相続税における物納のデメリットとは

土地の相続税における物納のデメリットは、物納が認められる条件が厳しい点です。
物納を選択する前に、まず相続した土地が物納の条件に適合しているかを調べることが必要です。
税理士などの専門家に相談し、物納の可否や相続税評価額を調べるための物件調査をおこなうこともできます。
現状条件に適合していなくても、問題点を解決すれば物納が可能になるケースもあります。
よくある問題点は、土地の境界線が明確でない、賃貸物件において賃貸借契約書がないなどです。
土地を物納するためには、相続税申告期限内に問題点を解決しなければならず、準備に手間がかかる点はデメリットです。
問題の複雑度によっては、解決に年単位の時間がかかる場合もあり、物納提出期限からさらに1年延長しても解決できないリスクがあります。
また、土地の相続税評価額が時価よりも安い場合は、物納よりも売却のほうがお得なケースもあります。
物納後に返還される差額と、売却益から譲渡所得税、相続税、売却にかかる経費を差し引いた手取り額をシミュレーションし比較することが大切です。
物納を選択する場合、相続税の納付期限から収納日までの期間、もしくは物納が却下された日までの期間の利子がかかります。
物納のための準備が長引きそうな場合には、利子税についても計算に入れておく必要があるでしょう。
物納を選択する場合は、物納可能な不動産であることが前提です。
また、売却により現金化してから相続税を支払う場合には、納税期限内に売却できる見込みがあることが前提です。
どちらのケースでも、自己判断が難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。

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まとめ

土地の相続税における物納とは、現金で相続税を支払えない場合に財産で納税することを指します。
物納ができる財産には制限や優先順位があるため、自分で自由に決められるわけではありません。
土地を物納するメリットには、譲渡所得税がかからない点や相続税評価額が時価よりも高い場合は差額の返還で得をする点などが挙げられます。