生前からできる不動産相続の準備は?争族・節税や認知症について解説
不動産のように物理的に分配できない財産は、遺産分割協議で揉めるイメージを持つ方も多いでしょう。
亡くなる前から生きている方の財産について話し合うのは気が引けるかもしれませんが、時間に余裕がなければ関係性に亀裂が入ったり金銭的な損害が発生したりする恐れがあります。
この記事では、争族・節税・認知症の3つの項目に分けて、生前から始められる準備について解説します。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
不動産相続で生前から始められる争族対策の準備
相続時に発生したトラブルを揶揄して使われる「争族」は、どんなに親しい関係性を築いていた親族間でも他人事でも起こりうる問題です。
「うちの家族は大丈夫」と思い込んでいると、揉め事に発展したときに対処方法が見つからずに泥沼化する恐れもあるので、どの家族も危機感を持って準備をするべきです。
ここでは、争族対策とトラブルを避けるための方法について解説します。
争族対策とは
争族が発生する要因はさまざまありますが、財産を引き継ぐ権利のある人それぞれの置かれている状況や価値観の違いで、すれ違いに発展するケースが大半です。
経済力に差があると「平等に分配するべき」と考える方と「生活が苦しい方に多く分配してほしい」と考える方が出てくる可能性があります。
また、被相続人の介護を長年おこなっていた方が、ほかの親族と同じ割合の財産しか引き継げないとなると不満を募らせる可能性があります。
そこで、あらかじめ被相続人を交えて全員の希望や主張をまとめたうえで、考え方にズレがある部分は時間をかけて擦り合わせるなどの準備が必要です。
遺言書や贈与の活用
生前からできる争族対策として、遺言書の作成・生前贈与・民事信託などが挙げられます。
遺言書は、自分で書いて自分で保管する「自筆証書遺言」と、公証人が作成して役場で保管する「公正証書遺言」、そして公証人に遺言書の存在を証明してもらい自宅で保管する「秘密証書遺言」の3種類に区分されます。
遺言書の内容はもっとも強い効力を持つので、親族間での揉め事を回避する対策方法として有効です。
生前贈与は、年間110万円まで非課税で譲渡できる制度で、計画的に親族に財産を分配すれば亡くなったあとに残された家族が揉めるリスクを減らせます。
民事信託(家族信託)は、生きているうちに信頼できる方を選んで管理と継承先を決めておける制度です。
財産管理の自由度が高いので、所有者の代わりに不動産の売却などに携われて、効率よく財産を分配できます。
遺産分割協議がまとまらないときは審判分割
生前対策が間に合わなかったりうまくいかず遺産分割協議で話し合いが難航して争族が起こりそうなときは、家庭裁判所に相談して法的に分割する方法(審判分割)がおすすめです。
家庭裁判所が入ったところで親族間の関係値の悪化を防げるとは限りませんが、「配偶者の税額軽減の特例」や「小規模宅地の特例」などの減税措置を適用させるための手続きには間に合います。
▼この記事も読まれています
相続空家の特例は共有名義でも適用できる?併用の可否と一緒に解説
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
不動産相続の生前から始められる節税準備
土地や建物のように数千万単位の価値がつくような財産は、高額な相続税が課せられるのが一般的です。
財産を引き継ぐ親族たちに税金負担が重くのしかかりがちですが、所有者が亡くなる前に生前贈与をすると、節税効果が期待できます。
ここでは、生前贈与とはどのようなものか、メリット・デメリットについて解説します。
生前贈与とは
生前贈与とは、土地や建物の所有者が生きているうちにほかの方に無償で譲る方法です。
土地や建物を譲る方法として、亡くなったときに譲渡を約束する死因贈与・遺言書の作成・遺産分割協議による合意などがありますが、最も節税効果が高いのは生前贈与と言われています。
一般的に、相続税よりも贈与税のほうが利率が高いため「贈与を受けたら損をする」と認識する方もいます。
しかし、税額を決める財産評価は贈与時点を基準にするので、贈与を受けてから価値が上がっても所有者が亡くなったときの相続税には影響しません。
節税面でのメリット
計画的に財産を無償譲渡していくと所有者が亡くなったときの遺産が少なくなるため、将来的に支払う相続税が少なくなる点においてメリットと言えるでしょう。
2013年の税法改正により相続税の控除額が減少し、2015年に20歳以上の直系卑属に対する贈与税が軽減される法律が制定されており、贈与をしたほうが節税効果が高いと注目されるようになりました。
とくに、遺産を引き継ぐときの税金は累進課税が適用されるので、亡くなった時点で財産が少ないほど課税される税率も低くなります。
節税面でのデメリット
長期的に定額贈与すると、高額な贈与税が発生して節税効果が得られない恐れがある点には注意が必要です。
暦年課税の場合は基礎控除が1年あたり110万円まで認められていますが、以下のケースに該当すると課税対象になり得ます。
毎年一定額を受け取っていたとしても、相続発生から3年以内の贈与は遺産として課税対象になります。
この場合、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円を受け取る)とみなされて贈与税が課税されてしまうのです。
適切に基礎控除内で贈与を受け取るためには、贈与契約書を作成して税務署に認めてもらいましょう。
生前贈与したほうが良い場合
将来的に土地や建物の価値が高くなると見込まれる場合は、価値が高騰する前に贈与を済ませておくと評価額の増額を抑えられるので節税できます。
また、賃貸物件を所有している場合は、不動産と家賃収入が二重で遺産に含まれてしまうので、生前に譲渡しておくと遺産に対する課税額を抑えられます。
▼この記事も読まれています
家族信託のやり方と流れは?必要書類と注意点を解説
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
不動産相続で生前から始められる認知症対策の準備
所有者が認知症になって判断能力が不十分と認定されると、不動産の相続対策ができなくなります。
それだけでなく、財産保護の目的で銀行口座が凍結されたり不動産売却ができなくなったりするので、介護施設等に入るための入居費用も親族の資産や財産から捻出しなければなりません。
このような負担を減らすためにも、有効な認知症対策を2つ解説します。
任意後見制度
任意後見制度とは、財産の所有者に十分な判断能力があるうちに認知症になった場合に備えて代理人(任意後見人)を立てて、公証人に公証証書を作成してもらい代理権を与える制度です。
代理人は、生活・療養看護・財産管理に関わる代理権を取得します。
公正証書で認められていれば、財産の所有者が認知症になったあとでも、家庭裁判所の選定した任意後見監督人が監視するもとで代理人が適切な範囲で保護・支援が可能です。
所有者の意向が尊重されるので、具体的な相続対策について言及しておくと、代理人がその業務を引き継ぎます。
家族信託
家族信託とは、信頼できる親族と信託契約を締結して財産管理・処分を任せる制度です。
十分な判断能力があるうちに財産管理や処分の権限を渡しておけば、認知症になっても残された家族に制限がかからず済みます。
遺言書では一次相続までの継承先を指定できますが、家族信託なら二次相続以降の継承先まで指定できるので、孫やひ孫の世代まで含めて管理したい方に向いています。
▼この記事も読まれています
相続の養子縁組とは?節税面でのメリットと注意点を解説
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む
まとめ
どんなに良好な関係を築いていた親族間でも遺産をめぐってトラブルになるケースは多いので、所有者が生きているうちから準備する必要があります。
税金負担を軽減するなら、計画的な贈与が効果的ですが、基礎控除を超えないように贈与契約書の作成は必須です。
同時に認知症になるリスクに備えて、親族に権限を渡す制度も検討しましょう。
▼ 不動産売却をしたい方はこちらをクリック ▼
売却査定フォームへ進む